エピソード2:実りを願ってドンドドン<その3>
自然と共に暮らす厳しい環境に生きていながらも、村人たちの心はいつも穏やかです。
この時代は今よりも少し気候が暖かく、山の幸でも海の幸でもたくさん採れました。
村人たちは、それが山の神様、海の神様から与えられた、ありがたい恵みだと考えていました。
そのため、いつも感謝を忘れず、奪いあったり独り占めしたりしません。
すべてが「おたがいさま」なのです。
人々の暮らしが穏やかで、いつまでもいつまでも続いた秘訣は、こうした考え方にあるのかもしれません。
今夜のお楽しみは、何と言っても盛りだくさんのご馳走です。
辺り一面に料理のいい匂いが立ち込めています。
村の女たちが、前の日から腕によりをかけて作った品の数々です。
猪や鹿の肉と根野菜を煮込んだ鍋料理。川や海で獲れたお魚の干物。雑穀の雑炊。クルミや栗など木の実をすりつぶし、粉を固めて焼いたせんべい、団子。豆類の煮物に味噌、等々。
豊富な食材を使って、色んな料理がずらっと並べられています。
それから、なんといっても果物から作ったお酒が大人たちのお楽しみです。
もちろん子供達も楽しいひと時を過ごしています。
でもやっぱり、いい匂いがする焼き魚やお肉がご馳走でしょうか。
今オズやナルミナがお皿にとっているのは、鳥の串焼きみたいです。
まだ箸の文化がない時代なので、熱いものを食べる時は、串に刺したりサジで取ったりしています。
いっぱい食べて元気に育って欲しいところ… ですが…
だいぶ遅い時間までドンチャン騒ぎをしているので、いつも寝る時間を過ぎてしまいました。
オズが食べながら船をこいでいます…。
そして大人たちは、しこたま飲んで食って、そこらへんで雑魚寝です…。
オオカミや危険な獣たちも、山に豊富な餌があるので、人里までは寄ってきません。
外で雑魚寝できるなんて、ホント、幸せな世界ですね…。
こうして、村の夏が終わっていきます。
つづく。
※この物語はフィクションです。すべて架空のお話になります。