エピソード1:時をこえてコンニチワ<その3>
さて、お祭りの準備もそろそろ出来上がってきました。
祭壇の飾りを任されていたサザミナたちのところへ、おじいさんとおばあさんがやってきました。
この二人はナルミナとオズの祖父母です。
おじいさんは村長(ムラオサ)の「カシン」。
おばあさんは巫女長(ミコオサ)の「トヨ」です。
この世界のムラオサは、村のいろんな問題を治めることで、人々からとても信頼されています。
またミコオサは、何人かいる村の巫女の長老です。
でも、決していばったり、村人をこき使ったりはしません。
村の人たちはとにかく良く働きます。
今日の三内村は一段とせわしない様子です。
特に調理場の様子は、お祭りの準備のため火の車。
料理は女たちの仕事ですが、沢山調理しなければならないので、みおものサザミナには少しつらい仕事です。
そんなサザミナをみかねたトヨは、もうちょっと楽な雑用を任せました。
この時代の出産はとても命がけです。
赤ちゃんが無事に生まれるかどうかもわかりません。
そのため、妊婦さんは村全体で大切にされていました。
今日のお祭りはまず、豊作を願うお祈りから始まります。
巫女の祈祷(きとう)で、山の精霊と対話するのです。
後半は、お祈りで呼んだ精霊と一緒に、里山の食材と畑の作物で作った料理を食べて、自然の恵みのありがたさを祝うのがならわしです。
でもまだ小さい子供のオズには、そんな行事なんておかまいなし。
ついさっきも草団子をつまみ食いしそうでしたが、早く美味しいごちそうにありつきたくて仕方ありません。
いえ、大人たちの中にも、本当は早くお酒を飲んで、美味しい料理を食べることばかり考えている人もいるとか…?
つづく。
※この物語はフィクションです。すべて架空のお話になります。